超高齢社会、病気ではなく人を診るという教育はされるものの、実際には専門分化が進み、こぼれ落ちる困りごとはどんどん増えています。健康問題の切り分けができないと、本人も家族も、周囲の人々も医療者もみんな困ってしまう構造なのです。
そんななか、どんな病でも診られるジェネラリストは、受診する立場の市民にとって待望の存在です。
プライマリ・ケアの大御所、藤沼先生がご自身の臨床経験をふんだんに盛り込んだ複雑困難な時代を生き抜くガイドを単著してくださいました。
どの章も珠玉ですが、特に一つ紹介しますと「マルチモビディティ」へのアプローチという稿では、ためしにすべての疾患に対してガイドライン通りにやってみると、日常の生活が立ち行かなくなる例を提示しながら、「治療負担」のマネジメントや、患者の「生活」を最適化することを優先し、関連する地域の多職種を巻き込むといったことが解説されています。このように大局的な視点を持つのは難しいですが、このような医療を展開したいと感じました。
エビデンスがあるところはエビデンスに基づき、エビデンスがないところは豊富な経験に基づいたガイドです。基本的には専門家が対象になる書籍ですが、行き詰まった際には支援者のどなたにとっても参考になると感じられる書籍だと思います。何回も再読して味わいたいと感じた一冊です。

 

タイトル:『卓越したジェネラリスト診療』入門ー複雑困難な時代を生き抜く臨床医のメソッド
著者: 藤沼康樹
出版社:医学書院